
田中 基 著
定価 4200円+税
判型 四六判 上製
頁数 416ページ
装幀 毛利一枝
発売 2023年11月8日
ISBN 978-4-7684-5952-2
[内容紹介]
中沢新一さん絶賛!
「田中基は縄文研究に捧げたその清冽な人生をとおして、縄文図像学の奥に胎生学の基層を見出した。生まれたばかりの知性が手探りで世界から取り出そうとしている世界像が、土器に刻み込まれている。この発見をつうじて、彼は縄文人の眼で世界を見ることのできる稀有な人間となったのだ。」
日本列島の八ヶ岳山麓に縄文中期の豊富な内容――女神、蛇体、半人半蛙、幼猪等――の精霊を表現した土器図像が発掘された。これらは『古事記』『日本書紀』の天地創造の神話に通じており、王権神話も深層において野性的、土着的な意識を乗り越えることができなかったといえる。さらに中世諏訪祭は蛇体祭祀であり『記・紀』の蛇体祖霊来訪神事と同質であるといっていい。今日の諏訪の御柱祭はそれらの変容である。
増補新装版刊行にあたって、第四章「大地に描かれた胎芽・胎児・出産像をめぐって――縄文図像と三木胎生学として」を追加。以下のような内容である。
「海の底にあって死者を迎え入れ、新しい生命を送り出す他界という、民俗学者折口信夫の発想と、生物学者である三木さんの生命記憶理論が共振する感動的な図が描かれた土器が発掘された。
縄文の人たちは、神話や儀礼以前に生命の生誕を探究するなかで、母胎の中で行われている受胎してから誕生するまでのプロセスが、生命が海で誕生し、魚類が海から陸にあがって両生類、爬虫類、哺乳類の段階を経て人類となる過程と二重になってメタモルフォーゼしていることを認知していた。このことを証明する。」
[目次]
第一章 土器図像と神話文脈
第二章 古諏訪祭政体の力動的コスモロジー
第三章 <山人論><まれびと論><異人論>をめぐる柳田國男・折口信夫・岡正雄の葛藤劇
第四章 大地に描かれた胎芽・胎児・出産像をめぐって
――縄文図像と三木胎生学
[著者]
田中基(たなか・もとい)
1941年2月11日山口県生まれ。2022年11月28日長野県で逝去。
早稲田大学第一文学部卒業。人類学・民俗=民族学・考古学季刊誌『どるめん』を編集。「古部族研究会」の同人と共に古諏訪祭政体について研究するかたわら、「縄文造形研究会」では縄文土器図像の神話文脈への変換を模索。東京都北区から長野県富士見町に移住、のち茅野市に転居。井戸尻文化講座の講師や多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員、明治大学リバティアカデミー公開講座の講師なども務めた。