
勝山 実 著
定価 2000円+税
判型 四六判 並製
頁数 240ページ
装丁 藤田美咲
カバー彫刻 明田一久
本文イラスト 夕タン(ゆうたん)
発売 2024年9月20日
ISBN 978-4-7684-5966-9
自立にだまされるな。
支援をするなら、カネをくれ。
両親がいなくなったらどうするって?
安心してください。ひとはだれにでも寄生できる。
ひきこもり大反乱!
すいせん=栗原 康(アナキズム研究)
著者の勝山さんは1971年生まれ。高校3年生の時に不登校になり、以降、「ひきこもり」となりました。現在に至るまでの壮絶な人生は本書を読んでいただくとして、いわゆる「8050(はちまるごーまる)問題」世代のど真ん中です。勝山さんはここ数年の間に、母親(ママン)、そして父親(ダディー)を喪いました。「親亡き後のひきこもり」を生きています。
これまでも『安心ひきこもりライフ』(太田出版)などでひきこもりの生きる道を模索してきた勝山さんですが、今回のテーマはずばり、「自立」です。
2023年の内閣府調査によると、全国のひきこもりと呼ばれる人たちは140万人を超えています。これまで相当の「自立支援」を行ってきながらも、ひきこもりがなくならない、いやむしろ増加しています。そもそも140万人以上の不登校やひきこもり状態にある人たちを自立させるなんて、可能性を考えても目指すべきことなのでしょうか?
自立支援のほとんどは就労支援。でも、不登校にもひきこもりにならずに社会に出た人たちと同じスタート地点に立てるわけでも、同じ眼差しで迎えられるわけでもありません。そして結局のところ「働きたいけど働けない」と口にするようになる、そう勝山さんは書きます。
勝山さんはひきこもりを、「学校にも行かない、アルバイトもしない、ただ無条件で生きる権利が保障された世界を求める人間ストライキ」といいます。
相次いで繰り出される「自立支援」はひきこもりへの支援ではなく、「自立支援業者」の「支援」であると本質を喝破し、いのちの瀬戸際で苦しむひきこもりに、みっともなくてもいい、寄生してでも「生きよう」と呼びかける。これはひきこもりだけでなく、障害者や生活困窮者への支援とも響き合うことです。
《本書もくじより》
序 章 空想から蜂起へ
シン・ひきこもり宣言/寄生のすすめ
自立からの卒業/ご主人様研究―ひきこもり支援は誰のものか
第一章 六畳間の大宇宙
●半人前理想主義から、ゼロ人前理想主義へ
空の鳥を見よ/ゼロ人前理想主義
いのちのお金──偽善者よりお金が大事/ジリツ・スキーム
●この星で働く理由がない
俺たちゃみんなコバンザメ──99%のためのコバンザメ宣言
心の田を耕す農夫/ひきこもりなまぐさ進路相談──十五の夜
ルール/この星でどうやって生きていくか
第二章 働かない奴隷
●現実からの逃走
ひきこもりダイアリー──定本 身の上話/自己蜂起
人間ストライキ/人間バートルビー──他人にしわ寄せがいく/逃げ相撲
現実からの逃走/いつだって第一希望/レベル2の生活──ひきこもり 村の勇者
●駄々っ子人生
ひきこもり当事者からひきこもりを取ったらなにが残るのか?/ひきこ もりバカ
ひきこもりTODOリスト/コツコツ努力をする習慣/有象無象の力
ひきこもり安楽死論──にわかに語る/合理的排除──おしゃべり不死鳥
清らかなルサンチマン/この星には正義がない
第三章 ポスト8050
●ママン編―寝たきり老婆vsひきこもり
9060問題/いがみ愛/すこやかなママン/クーデター失敗かいやいいやはああはー/リアル地獄変
ヘルパーが来るとこそこそ隠れる生活/特養に申し込む
もう、おたけびは聞こえない/ママン帰る/いつもニコニコ
GO TO ホスピス/ママンロス/ママンのお葬式/愛の結晶化
ママンからの手紙/夢のかけら
●ダディー編―ファイナル・カウントダウン
リアル・シンプソンズ──六カ月前のこと
「親は死なない説」を唱え続けた、或ひきこもりの一生/いきなり最終回
決死隊突撃/決死隊再突撃/すべての契約書に印鑑を押す男
緊急家族会議/オキニとオキラ/入院できない? できる?
男の約束/ダディーロス/親が死んだ〝直後〟にどうするか
みんなド素人、みんな赤ちゃん
第四章 御用当事者
●ひきこもり三十年が生んだ「弱者の代表」
自立死援──六畳間の講演会/代表者について
組織のなかで個人としてがんばっている人について
ひきこもりに忍び寄る極右の影/御用当事者になりたいキミへ
つじつまを合わせない
第五章 パワー・トゥ・ザ・ひきこもり
●支援者にだけお金が流れる構造
ひきこもり要求論/ひきこもり基本法──悪の予防
藤里町が心配だ/ひきこもりキャリア・コンサルティング
入寮施設に入ると親子で破産する/ひきこもりファイナンシャル・プラ ンナー
ひきこもり条例について/居場所は結果論
なぜ子ども食堂なのか/誰も望んでいないひきこもりの政治参加
寝そべれば見えてくる
第六章 なにもしないをする
●アイ・アム・プーさん
オオサンショウウオ/一生勉強、一生ひきこもり
繭居大師/アリとキリギリスとひきこもり
ひきこもり文明/do Nothing なにもしないをする
あとがき
主要参考文献
出所一覧
この本をつくった人たち
【著者紹介】
勝山 実(かつやま・みのる)
1971年、神奈川県生まれ。横浜の大地が生んだデクノボー。自称ひきこもり名人(中国語だと繭居大師)。高校3年時に不登校になり、以来ひきこもり生活に。
著書に『安心ひきこもりライフ』(太田出版)、『ひきこもりカレンダー』(文春ネスコ)、『バラ色のひきこもり』(金曜日/電子書籍)などがある。好きなものは、日本酒、戦国時代、乳酸菌。